【日時】2018 年 11 月 24 日 10:00〜17:00
【会場】桜美林大学町田キャンパス(太平館)東京都町田市常盤町3758
<プログラム詳細>
【午前】「認知症の当事者が考える認知症の人にやさしいまちとは」をテーマとした、講演会とパネルディスカッション
10:05 - 10:35 | 基調講演 / 丹野 智文 氏 |
10:45 - 11:45 | 町田市で活躍する認知症当事者のみなさんによるパネルディスカッション |
【午後】”認知症の人にやさしいまちづくり" を考える認知症当事者の方とまちづくりを担っている方で議論します
13:00 - 14:00 |
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14:15 - 15:15 |
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15:30 - 16:30 |
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16:45 - 17:15 | 全体クロージング |
ホール会場を埋める大勢の来場者が駆け付け、「まちだDサミット ”認知症の人にやさしいまちづくり”のはじめかた」開演。まずは、認知症の人ととも取り組んできた町田市の取り組みの紹介と今回のイベントに至った経緯、そして、当事者の視点から地域のあり方をまとめた16の文章「まちだアイ・ステートメント」の説明がありました。
【丹野智文氏】
若年性認知症と診断後の戸惑い、周囲の理解による仕事の継続、その後、同じ認知症当事者や講演活動などの出会いから変化した、笑顔で過ごせるようになった現在に至る心境について講演がありました。
認知症の人へのメッセージでは、信頼できる人に「困っているから助けて」と言えることの大切さと、当事者の仲間達も輝いて暮らす人がたくさんいることをアドバイス。社会に対しては、「認知症にやさしいまち」と聞くようになったが、ジブンゴトの意識が重要。当事者を見守りつつ、その人の自立を妨げないでほしいこと、認知症の人が安心して外出できるまちは、誰にとってもやさしいまちになるはずと提案がありました。
【認知症当事者によるパネルディスカッション】
ステージ上に町田市在住の5名の当事者が登壇。丹野さんを司会に、「認知症にやさしいまち」とは、「認知症の人と一緒に行なうまちづくり」について、活発な意見交換が行われました。
明るく笑い混じりのディスカッションの中、思わず拍手が起こるやり取りがありました。道が分からなくなり周囲に聞きたいけれど恥ずかしくて出来ない、という当事者に対して、丹野さんが実体験を再現したときのことです。「スミマセン、僕、若年性認知症です!」って明るく元気に挨拶すれば相手はやさしく教えてくれる。「失敗を恐れず成功体験を重ねよう。暗い顔してたら、認知症の人=暗い人になる、自分達で認知症のイメージを明るいものに変えていこう!」という発言に会場から大きな拍手が湧きました。当事者同士だから出せる本音のやり取りは、認知症の人が普段、言いたいことを言えない社会の側面を見せてくれたのかもしれません。
会場からも認知症の人の発言が多く、"認知症の専門家"である認知症の人の言葉から、まちづくりを動かす重要性を認識するパネルディスカッションになりました。
午後からは、認知症の人の暮らしに関わる9つのセッションを行いました。3部屋に分かれて3つのセッションを同時開催するパラレルセッションスタイル。それぞれのセッションの様子を簡単にご紹介します。
人手不足の日本社会で、働きたい認知症の人、社会とつながっていたい認知症の人がたくさんいる。仕事に発展したホンダのケースは、働く当事者、コラボする企業の視点になって考え、店舗担当者へ説得を続けたことで実現した。
認知症と診断された後に、どんな本や情報と出合うかが重要。絶望的な内容でふさぎ込む人も多い。書店や図書館で欲しい情報が入手できるように、消費者側ができる行動(購買やリクエスト)を意識すれば、欲しい情報もまわり出す。
診断後の心境の変化などについて、当事者と医師を含めたトークセッションスタイル。会場一体で考えようと紙を配布。病院に何が必要かという会場への問いかけには、最先端医療技術よりも、気配りを求める声が8割と多かった。
バリアフリーは進んでいるが、全ての人に対応したものではない。その実現には心のバリアフリーも大切。まずは、現場の人や行動できる人が小さなアクションで、共感や応援を増やすこと。交通システムを変えていく一歩になる。
人生100年時代は高齢者が地域で暮らしていく時代。まち全体を暮らしやすいデザインにする意識変化の時期。イギリスの一部では標識やバスなど認知症の人が使う前提で設計。環境整備により自分らしく暮らせる社会が可能になる。
「安心して外出できるために、企業や地域組織ができることとは」をテーマに、当事者、町内会、PTA、コンビニのゲストが活動を報告。地域ネットワークの行動で地元の関係性がうまれ、孤立や事件防止につながるケースもでている。
スターバックスでのDカフェ(認知症カフェ)開催は、当事者の本人会議と店舗のミッションが重なったことと、それぞれの役割のバランスを保っている活動が継続の鍵。認知症の人や地域の人の思いをつなぐ場所として継続したい。
セキュリティー強化の時代、自分のお金を自由に使えず、当事者や家族、金融機関も困惑するケースが多発。地域で協力して、認知症の人が商店街などで使える新しい仕組みを構築できれば、巧みな犯罪に巻き込まれる事件も防げるだろう。
技術を活用して、認知症の人の暮らしの可能性を広げることはできる。日常でスマホ等を活用したり、ネット上で交流を広げる当事者も増加中。その人が何をしたいか考え、今できないことをできるようにすることがテクノロジーの役割。
一日の最後に、各セッションの話し合われた内容を、周囲の人達と情報共有する振り返りの時間を持ちました。
最後まで参加した丹野さんから、「これだけ地域のなかに認知症の人の意見が混ざり行動につながっている町田市は素晴らしい。まずは、認知症の人という先入観を捨て、目の前にいる不安をもつ人の気持ちをよく聞くことで、“一緒に”何かできるはず。その積み重ねで、まちが変わっていくだろう」と語ってくれました。